「ゲーム配信で、Discordの通話相手の声を入れたくない」 「マイクの音質が悪いと言われるが、高い機材は買えない」 「Web会議でBGMを流したいが、設定が分からない」
PCで音声を扱っていると、こうした「音のルーティング(配線)」の壁に必ずぶつかります。物理的なケーブルなら繋ぎ変えれば済みますが、PC内部の音はどうすればいいのでしょうか?
その答えが、今回紹介する「Voicemeeter Banana(ボイスミーター・バナナ)」です。
これはPCの中に「仮想的なミキサー卓」を作り出すソフトです。最初は画面が複雑で宇宙船のコックピットのように見えますが、仕組みさえ理解すれば、数万円のオーディオインターフェース以上のことが無料でできるようになります。
Voicemeeter Bananaとは?
フランスのVB-AUDIO Softwareが開発している、Windows用の仮想オーディオミキサーソフトです。基本無料(ドネーションウェア)で使えます。
ラインナップの違い(無印・Banana・Potato)
Voicemeeterには3つのバージョンがあります。
- Voicemeeter(無印): 入出力が少ない。シンプルだが機能不足になりがち。
- Voicemeeter Banana: 【おすすめ】 入出力のバランスが良く、標準的な配信や通話には最適。
- Voicemeeter Potato: さらに高機能だが、設定が複雑すぎるため上級者向け。
まずは**「Banana」**を入れておけば間違いありません。
Voicemeeter Bananaは何ができるのか?
一言で言えば、「PC内のあらゆる音を、好きな場所に、好きな音量で送れる」ようになります。
- マイクの高音質化: ノイズ除去やイコライザー機能で、安いマイクでも「イケボ/カワボ」に補正できる。
- 音の分離: 「自分には聞こえるけど、配信には載せない音」や「相手には聞こえるけど、自分には聞こえない音」を自在に作れる。
Voicemeeter Bananaのインストールと初期セットアップ
公式サイトからのダウンロード
公式サイト(https://vb-audio.com/Voicemeeter/banana.htm)からダウンロードします。 インストーラーを実行し、完了したら必ずPCを再起動してください。これをしないとドライバが正しく認識されません。
Windowsサウンド設定の変更(※最重要)
再起動したら、Windowsの「サウンド設定」を開きます。 ここが最初の難関です。PCの「既定の再生デバイス」を、普段使っているスピーカーから「Voicemeeter Input」に変更します。
- 変更前: スピーカー (Realtek Audio) など
- 変更後: VoiceMeeter Input (VB-Audio VoiceMeeter VAIO)
「えっ、スピーカーじゃなくていいの?」と思うかもしれませんが、これで正解です。 PCの音を一旦すべてBananaに預け、Bananaからスピーカーへ渡す形にするためです。
画面の見方と基本操作:これさえ分かれば怖くない
Bananaを起動しましょう。ツマミだらけで圧倒されますが、大きく3つのエリアに分かれているだけです。
① HARDWARE INPUT(左側:マイク入力)
ここには「物理的な入力機器」を設定します。 「Hardware Input 1」の名前部分をクリックし、使っているマイク(例: WDM: Microphone)を選びます。これでマイクの音がBananaに入ります。
② VIRTUAL INPUT(中央:PC内部の音)
ここには「PCソフトからの音」が入ってきます。
- Voicemeeter VAIO: 通常のPC音(YouTube、ゲーム、システム音など)
- Voicemeeter AUX: サブの音声(後述するDiscordや音楽プレイヤー用)
③ HARDWARE OUT(右上:スピーカー出力)
ここには「音の出口」を設定します。 「A1」ボタンをクリックし、普段使っているヘッドホンやスピーカー(例: WDM: Speakers)を選びます。 これで、Bananaに入った音が、実際に耳に届くようになります。
ルーティングの基本ルール「AとB」
各入力レーンの下に、**「A1」「A2」「A3」「B1」「B2」というボタンがあります。これが「行き先ボタン」**です。
- Aボタン(A1, A2…): 「自分に聞こえる音」(モニター)。スピーカーやヘッドホンへ送る。
- Bボタン(B1, B2): 「相手に届く音」(出力)。OBSやDiscordへ送る。
【例】マイク設定の基本
- Hardware Input 1(マイク)の 「B1」 だけをオンにする。
- これでマイク音声が「B1(仮想マイク出力)」に送られ、通話相手に届きます。
- もし「A1」もオンにすると、自分が喋った声が自分のヘッドホンから聞こえてしまいます(ループ)。
実践テクニック①:マイク音質を劇的に向上させる
マイク入力(Hardware Input 1)にあるパネルを使えば、高価な機材なしで音質改善が可能です。
Intellipan(インテリパン)
正方形のエリア(Color Panel)です。ここにあるオレンジ色の点をマウスでドラッグします。
- 左下: 低音が強調され、ラジオDJのような太い声(イケボ風)になります。
- 真ん中上: 高音が強調され、クリアな声になります。
ノイズゲート(Gate)
丸いツマミです。これを少し(1.0〜3.0くらい)回すと、「喋っていない時のサーッという雑音」や「キーボードの打鍵音」を自動でカットしてくれます。回しすぎると語尾が切れるので注意。
コンプレッサー(Comp)
これも丸いツマミです。回すと、小さい声を大きく、叫び声を抑えてくれます。音量が均一になり、聞き取りやすさが劇的にアップします。
実践テクニック②:OBSやDiscordとの連携(音の分離)
Bananaの真骨頂、「音の分離」をやってみましょう。 例として、「ゲーム音(通常音)」と「Discord通話音(Aux音)」を分ける設定を紹介します。
Discordの設定
Discordの「音声・ビデオ」設定を開きます。
- 出力デバイス: 「VoiceMeeter Aux Input (VB-Audio VoiceMeeter AUX VAIO)」 に設定します。
これで、Discordの通話音声だけが、Bananaの中央にある「Voicemeeter AUX」レーンに流れるようになります。
OBS Studioの設定
配信ソフトOBSで、音声を別々に取り込みます。
- マイク音声: プロパティで 「Voicemeeter Output (VB-Audio VoiceMeeter VAIO)」 を選択。(これはBananaの「B1」出力です)
- デスクトップ音声(ゲーム音): そのままPCの既定デバイス(Voicemeeter Input)の音を拾います。
- 通話音声: 新しく「音声出力キャプチャ」を追加し、「VoiceMeeter Aux Input」 を指定します。
こうすることで、OBS上で「ゲーム音」「通話音」「マイク音」の音量バランスを個別に調整したり、配信には通話音を流さない(OBSでAuxをミュートする)といった芸当が可能になります。
トラブルシューティング
音がブツブツ途切れる・ロボット声になる
PCの処理が追いついていない可能性があります。
- WDMとMME: デバイス選択時に「WDM: Speakers」と「MME: Speakers」が出てきますが、基本は遅延の少ない 「WDM」 を選びます。もしノイズがひどい場合は、安定性の高い 「MME」 に切り替えてみてください。
- バッファサイズ: メニューの「System Settings」からバッファサイズを調整できますが、まずはWDM/MMEの切り替えを試すのが先決です。
音が聞こえない
9割の原因は、右上の 「A1」デバイスの設定忘れ、または各レーンの 「A1」ボタンの押し忘れです。 「音がメーター上で動いているのに聞こえない」場合は、出口(A1)が正しく繋がっていないことを疑ってください。
まとめ:Bananaを使いこなして「音の支配者」になろう
Voicemeeter Bananaは、最初はとっつきにくいソフトです。 「AとかBとか意味が分からない!」と投げ出したくなるかもしれません。
しかし、「Aは自分の耳、Bは相手への出力」 という基本ルールさえ覚えれば、これほど強力な武器はありません。
- マイクのノイズを消す。
- 自分の声にイコライザーをかける。
- 裏でこっそり音楽を聴きながらWeb会議をする。
これら全てが無料で実現できます。ぜひBananaを導入して、PCオーディオ環境を「最強」にアップデートしてください。


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